Vierlandeのアンティーク・クロスステッチ・サンプラーに関心があり、Vierlandeについてまとめました。
断片的なメモや資料を整頓して、自分自身の理解を深めるために書いています。
先ずは、周辺予備知識から。サンプラーの話は次回になります。

 できる限り正確に書くよう努めていますが、私の勘違いや理解不足もあると思います。
 情報を得られる資料は、ドイツ語や英語がほとんどなのに対して、
 私の英語力は心もとなく、さらに肝心のドイツ語はてんで頼りにならないレベルです。
 手持ちの資料を満足に読みこなせていません。
 読まれる際は、こういった諸事情を心に留めていただければと思います。

=Vierlande(フィアランデ)=
ドイツの地域名。Hamburg(ハンブルク)の東南を占めるBergedorf(ベルゲドルフ)区内に位置する。
昔も今も農作物の栽培が盛んな地域。エルベ川沿い。
歴史上、統治者の入れ替わりが何度かあり、特にサンプラーが盛んにステッチされた時代には、
ハンブルクとLubeck(リューベック)の共同統治下にあった。
ハンブルク単独の統治下になったのは1868年。
  参考⇒ドイツ語Wikipedia "Vierlande"の項目へ
Index
・名前の由来
・人々の暮らしと仕事 (1830年頃)
・Vierlande 簡易単語帳

-名前の由来-
Vierlandeの名前は、4つの教区を含んでいたことに由来する。
"Vier"はドイツ語で数字の4。
"Lande"は、古い言葉で地帯・地域を意味するLandの複数形だと思われる。(*1)。
なお、一般的なLandの意味は、英語のlandやcountryなどに当たる。
通常、Landの複数形はLander。語尾に-eを付けて複数形とするケースは珍しい。
また、別の辞書によれば、LandeはLandの雅語だとする説明もあった(*2)。
一言コメント。名付け方が、日本の四国や各地にある三国に似ていて面白い。
*1: ISBN 978-4469012514「マイスター独和辞典」大修館書店 より
*2: ISBN 978-4095060712「ポケットプログレッシブ独和・和独辞典」小学館 より

4つの地区名は以下の通り。12,13世紀頃より同じ名称のまま現在に至る。
 ・Altengamme (アルテンガンム), アルテンガンメ
 ・Neuengamme (ノイエンガンム), ノイエンガンメ
 ・Kirchwerder (キルヒヴェーダー)
 ・Curslack (クルスラック)
カッコ内カナ表記はGoogle Mapの表示を参照。
一般に定着している別カナ表記がある場合は、後ろに添えた。
 
-人々の暮らしと仕事-
ちょうどサンプラーがステッチされていた頃、
1830年代にヨーロッパを旅行したアメリカの聖職者Robert Bairdが著した本の中に、
Vierlandeに関する記述があるのを見つけました(*3)。
興味を惹かれた部分を要約し、箇条書きにしています。意訳が入っています。

 ・ハンブルクに住む中~上流階級市民の服装は、西欧諸外国の都市ロンドンやパリ市民のものと
 変わらないが、市場へ作物を売りに来る農家の人々、中でもフィアランデの人々の衣装は
 注目に値する。
 ・フィアランデ地域に住む人々の先祖は、1500年代にプロテスタントの信仰上の目的で
 Flanders(フランダース)から移住してきた。
 移住後も、独特の衣装と敬虔な信仰は、変わることなく受け継がれている。
   補足: 1.「信仰上の目的」とした部分は、ルターの宗教改革の影響があったと思われる。
       2.フランダース=フランドル。現在のベルギー・オランダ・フランスにまたがる地域。
        なお、Flandersの形容詞はFlemish(フレミッシュ)。
 
 ・人々は非常に誠実かつ高潔で、勤勉に農地を耕しながら小さな村落で穏やかに生活している。
 ・ハンブルクは主にフィアランデから農作物(野菜・果物・牛乳)の供給を受けている。
 安息日を除いて毎日朝早くから、若い男女を中心とした大勢のフィアランデの人達が
 通りを歩いて行商する姿が見られる。肩と首の後ろに沿う形をした長さ約1メートルの板をかつぎ、
 板の両端から吊るされた紐に、農作物を入れたバスケットをぶら下げている。
 大柄な人々ではないが、女性でも信じられないほど多くの荷を携えている。
 ・骨の折れる生活をしているにも関わらず、生き生きとした血色の好い顔立ちからは、
 彼らが自分たちの生き方に満足していることが見て取れる。

*3: Robert Baird "Visit to Northern Europe"  J.S. Taylor & co., 1841 (pp.40-42)
  Google Booksで原本を読むことができます。

Vierlandeの伝統衣装をまとっている女性達。絵画のポストカードです。

左: "Madchen in Vierlander Tracht"
  画家Julius Weyde(1822-1860)、1850年の作品。
右:"Vierlander Bauer Frau mit Erdbeeren"
  画家Christoffer Suhr(1771-1842)、1805年の作品。
  フィアランデ農家の女性。カゴの中味はイチゴ。これが行商姿なのでしょう。

-Vierlande 簡易単語帳 -
語尾や途中の綴りが変化している単語について。
手持ちの辞書には全く載っていないため、類推も入っています。
単語:「意味」 品詞
Vierlande :「フィアランデ(地域名)」 名詞(複数) 基本形。
Vierlanden :名詞(複数)の3格 前置詞ausやinと組で見られるため、おそらく3格。…自信なし。
Vierlander :「フィアランデの人」または「フィアランデの男性」 名詞、単複同形
        「フィアランデの」 形容詞
Vierlanderin :「フィアランデの女性」 名詞 Vierlanderの女性形、単数形
Vierlanderinnen :「フィアランデの女性達」 名詞 Vierlanderinの複数形
Vierlander :「フィアランデの」 形容詞
        用例を見たところ、主にドイツ語圏外で使われている単語でした。
        他の言語で表記する際に、Vierlanderのウムラウト記号(a上の点)を
        外しているのかもしれません。

以上です。
次回はサンプラーについて。