References: Museum Celle sampler 1826 (permin), Anna E535, ORNAMENTE 1994/2
Fabric: Permin(Wichelt) 40ct Natural Brown Undyed
Threads: AVAS - Soie Surfine color#586, #109
284W×331H, 1over1

デザインの中心部分を超えて、現在135メートル地点。ひし形モチーフ地帯を抜けました。
大きなひし形では、3つの異なる外枠装飾を楽しむことができました。ほどよい繰り返し。
ひたすら同じ外枠装飾のひし形ばかりが並んでいるVierlandeサンプラーもあったりします。
 どのようなサンプラーなのか興味を持たれた方は ⇒ クリック
 リンク先は、European Reproduction Samplers (Sabineさん)のWebページです。

=ひし形モチーフについて=
-意味-
雑誌のモチーフ解説によると、Vierlandeのひし形モチーフは、女性の創造的な身体部分を表すそうです。
(あえて婉曲表現にしています。悪しからず)
転じて、誕生に関わるシンボルだと考えられているようです。
上部の角が欠けて別モチーフが配置される理由、なんとなく納得できるような気がします。

-余談-
面白いことに、日本の文化にも ひし形が同じ物を象徴している例があります。
「おひし」という言葉があるそうです。以下に、本の一部を引用します。

京都で生まれ育ってきた友人は、正座するときは、「おいどをしめなさい」、正座を崩すと「おひしがくずれますえ」と言われて育ってきたといいます。「おいど」というのは関西方言で「おしり」のことですが、現実には「おしり=おいど」ではありません。(中略)~わたしたちの文化は、こんなに美しい言葉を持っていたのだな、とあらためて思います。「おひしがくずれますえ」は、品があり、凛とした言葉です。 (中略) 正座する女性はきゅっと下腹部が締まり、「おひし」がきれいに菱形に保たれていたことでしょう。
三砂ちづる 『オニババ化する女たち 女性の身体性を取り戻す』 光文社, 2004 pp.81-82
(ISBN:978-4334032661 )

時代や文化が異なっていても、形が暗に同じものを示すのは興味深いことです。
モチーフの意味を知る前に、本好きの知人が「面白いから読む?」と貸してくれた本でした。
思わぬところで繋がる話があるものだと感謝しています。今回は図書館で借りました。

-小さな疑問-

Vierlandeのサンプラーにある色々なモチーフは、生活の中でもステッチされていたはずなのです。
ところが、ひし形モチーフを、サンプラー以外のアンティークで見かけたことがまだありません。
Vierlandeのアンティーク自体を見る機会がほとんどないとはいえ、少し不思議に思っていることです。
円形モチーフや生命の樹とは、使い所が異なっていたのかもしれません。
いつかアンティークの布にステッチされたひし形を目にする機会があるのか、謎のままなのか。
分からないものは、分からないままに。そっと置いて先へ進みます。