References: Museum Celle sampler 1826 (permin), Anna E535, ORNAMENTE 1994/2
Fabric: Permin(Wichelt) 40ct Natural Brown Undyed
Threads: AVAS - Soie Surfine color#586, #109
284W×331H, 1over1

2色使いのモチーフは難所でした。急がず徐行で通過。ほどかずに済んでホッとしました。
記事(4)辺りで手こずった経験が生きたかな、と思っています。

今回の主役は「双頭の鷲」。 モチーフから派生する疑問について軽めに探究などを。
※素人考察です。本当かどうか疑いを持ちながら読んでいただければ幸いです。
双頭の鷲 :頭が二つある鷲
(ドイツ語) Doppeladler
(英語) double eagle, double-headed eagle, two-headed eagle

= Vierlandeと 2つの都市 (Hamburg, Lubeck) =
本題に入る前に、3つの予備知識をざっと。地理、歴史、都市の紋章について。
1.フィアランデ地方は、現在のハンブルク州内に位置する。リューベックからは少し離れている。
  Google地図上で目測したフィアランデへの距離、ハンブルク中心地からは約20km、リューベックからは約60km。
2.サンプラーが作られていた頃(1800年前後)、フィアランデは2都市の共同統治下にあった。
3.紋章のデザインは、ハンブルクが城塞、リューベックが双頭の鷲。
   参考:紋章の説明をされているWebサイトさん ⇒ クリック
   リンク先は、『Moin! Hamburg ~ハンブルクと北ドイツの街~』内、「【ハンブルク余話】ハンブルクの紋章」のページです。

= 双頭の鷲 ~ステッチに見られる紋章 =
双頭の鷲は、Vierlandeサンプラーの中でよく見ることができるモチーフです。
ほとんどのケースで、円形や生命の樹 のモチーフに組み込まれています。
このサンプラーでは 2箇所の円形モチーフ内にあります。写っていないもう1箇所は、底辺の中央。
雑誌の解説には「(Vierlandeの)双頭の鷲はリューベックの紋章に由来する」旨が書いてありました。
地理と歴史を考慮したときに不思議に思うこと。ところで、ハンブルクの紋章は?

別のVierlandeサンプラー(*)からモチーフを一つ抜粋してステッチしました。
8頭の獅子と小鳥達、余りお目にかかれないモチーフです。

丸印を付けた部分、恐らくこれがハンブルクの紋章だと思います。
城のようにも見えるこの形、今のところ1作でしか見つけていません
使用した糸はSoie d'Alger #946、布は1826サンプラーと同じです。
*:"Mette Putfarckens 1811-1825".
European Reproduction Samplersから復刻されたサンプラー。チャートのリリースは2009年。
オリジナルは、イギリスV&A博物館の収蔵品 (Museum number:T.29-1940)。

さらに不思議に思うこと。丸印部分がハンブルクの紋章だとしても、
リューベックの紋章とされる双頭の鷲ばかりが頻繁にステッチされていたのはなぜ?

= ミニ考察 =
疑問のきっかけになった「双頭の鷲はリューベックの紋章由来」まで戻って考えることにしました。
モチーフの由来を、ハンブルクの紋章が見られない理由と合わせて探っています。あくまで推測です。

[仮説1] 双頭の鷲は、都市ではなく国(上位の支配者)の紋章に由来する。
[仮説2] 都市リューベックの紋章由来。支配影響力において、リューベックはハンブルクを上回っていた。
[仮説3] ハンブルクの紋章は、動植物ではなかったため仲間外れにされた。

1番、本命。神聖ローマ帝国(962-1806)、ドイツ連邦(1815-1866)の紋章由来だと考えています。
    ⇒ Wikipedia「双頭の鷲」 (目次「2.3 神聖ローマ帝国関連」に紋章の画像あり)
   都市リューベックが無関係という訳ではなく、もう一つ上の支配レベルに由来するのでは?と。
   ハンブルクの紋章が容易に見つからない理由としても、辻褄が合うように思います。
2番、対抗。リューベックは「ハンザの女王」「バルト海の女王」と呼ばれたハンザ同盟の盟主でした。
   ハンブルクも、ハンザに加盟していた都市です。
   ただし、Vierlandeサンプラーの最盛期は、ハンザ同盟が衰退終焉してから150年ほど後のこと。
   由来を「都市」リューベックの紋章に絞るには、もう少し強い裏付けが欲しいところです。
3番、番外。思いつきです。大穴に化けたら面白いかも?

-余談-
双頭の鷲は Dutch samplerにもステッチされています。
オランダの博物館から、2例を。
・サンプラー1 ⇒ Fries Museumへ (中心モチーフの左下)
           ※画像下、Afbeelding vergrotenをクリックすると拡大。  
・サンプラー2 ⇒ Openluchtmuseum
           ※画像をクリックすると拡大。 
1のモチーフは、"Paradigm Lost"のものとウリ二つ。